近年、世界的な健康志向の高まりを背景に、ノンアルコールのカクテル「モクテル」が注目されている。モクテルとはノンアルコールカクテルの新しい呼び方で、似せた、真似たという意味の「mock(モック)」と「cocktail(カクテル)」を組み合わせた造語だ。 「お酒は飲めないけどバーの雰囲気は好き」 「2軒目はノンアルコールがいい」 「お酒を飲む人と一緒だとジュースは頼み難い」 「食事に合わせるノンアルコールドリンクが楽しみ」
そう考えている人は意外に多く、その期待に応えるように近年はモクテルのバリエーションも格段に増えている。
そこで、世田谷代田にある「アートとカクテルの融合」をコンセプトにしたバー『Quarter Room』のオーナーバーテンダーである野村空人(そらん)さんに、モクテルの魅力や家庭でつくれるモクテルのレシピを教えていただいた。野村さんはロンドンのバーで約7年間研鑽を積み、帰国後は店舗経営の他、ブランドアンバサダーや店舗プロデュース、ディレクションを務め、海外でもカクテルやモクテルの技術指導をしている。確かな技術に裏付けされた野村さんならではのモクテルレシピを、家庭でも手軽に試せるようアレンジしていただいた。
21歳で単身渡英、約7年間ロンドンのバーでバーテンダーとして活躍したのち帰国。Fuglen Tokyoにてバーテンダーとして数々の賞を受賞、2017年に独立しバー・ドリンクのコンサルティング業を初める。その後、海外スピリッツのブランドアンバサダー、代々木上原のNo.や日本橋・兜町ホテルK5のバープロデュース、国産スピリッツ、ボトルドカクテルなど、さまざまなプロダクトのプロデュース手がけている。2023年1月、世田谷代田にアートとカクテルの新たな融合をテーマにしたカクテル・バー&スタジオ、「Quarter Room」をオープン。
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カクテルの本場、ロンドンで学んだ技術と経験から新しいカクテル、モクテルを次々と生み出している野村さん。21歳のとき、アートを学ぶためにロンドンへ渡ったが、生活のために働いたバーでカクテルの奥深さに惹かれ、本格的に取り組むようになった。異なる素材をブレンドすることで新しい色や味に出会えるカクテルは、野村さんにとってアートだったと言う。そして、野村さんがロンドンのバーで働いていたのは、モクテルが世界的に注目され始めた時期とも重なる。

「Quarter Room」には野村さんが選んだ国内外の珍しいお酒が並んでいる
「モクテルはカクテルの模倣としてつくられていたもので、ジュースとジュースを組み合わせたのが起源だと僕は思っている。あるいは有名なノンアルコールカクテルの『シャーリーテンプル』のように炭酸飲料とシロップを混ぜただけのものが多かった。しかし、単純なレシピだと味に奥行きが出ないし、今のバーシーンでは弱い。そこで、ロンドンやニューヨークなど、カクテル文化が盛んな都市のバーでは、ジンやラム、ウイスキーなどカクテルのベースとなるお酒をノンアルコールで代用することで、従来にない味と香り、見た目も美しいモクテルを開発し、お客さんに新たな楽しみ方を提案していったのです」

アート作品から新しいカクテルやモクテルの発想を得ることも多い野村さん。「Quarter Room」では定期的に入れ替えて作品を展示している。
モクテルはもともと、お酒が好きな人を前提につくられてきた。「今日は飲みたくない、飲めない」といったタイミングで、やや消極的な選択肢として頼むものだったのだ。しかし、今は選択肢の一つ、楽しみ方の一つとして、「今日はノンアルコールがいい」と積極的にモクテルを選ぶ人が若者を中心に増えている。野村さんによれば、コロナ禍でノンアルコールビールを選ぶ人が増え、その需要に応えるためノンアルコールビールが確実に美味しく進化していることも、モクテル人気を後押ししているという。
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モクテルはお酒を使わない分、味にボリュームをつけることが難しいが、近年はモクテルづくりに適した飲料や商材が進化していると野村さんは言う。「ジュニパーベリーやカルダモン、クローブなどを水と一緒に火にかけ、香り付けした蒸留水を抽出すればアルコール度数0%のジンができ、ノンアルコールのジントニックをつくることができる。このようなノンアルコールのスピリッツが多く販売されています。僕も水の代わりになるフレーバーウォーターはよくつくります。お茶やコーヒー、ミントなどを加えた水や蒸留水などを使うとより重層な味と香りのモクテルになります」

「食酢やワインビネガーを1〜2滴加えることで、レモンなどの柑橘系に含まれるクエン酸とは異なる味や香りを加えるレシピも多く開発されています。クエン酸より、酸の強い醋酸を使った方が味も締まります。また、ヨーグルトを混ぜたときにできる透明な乳清(ホエー)だけを使うことで、濁りのないカクテルをつくるといった新しい技術も開発され、多種多様なモクテルのレシピに応用できるようになりました。僕はもともと絵を描いていたので、色を塗るように味を重ねていくモクテルのレシピを考えることも多い。なので、味はしっかりしているけど透明な素材は重宝します。さらには、炭酸飲料で割るだけでも美味しい商材も多く開発されています。後ほどご紹介するエルダーフラワーシロップや未成熟のブドウの果汁からできるブドウ酢(ベルジュ)も、炭酸飲料で割るとシャンパン風になり、ご家庭で気軽に楽しめます」
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実際に家庭でモクテルやカクテルをつくるときにあると便利なグッズをいくつか野村さんに教えてもらった。いずれもバーテンダーが実際に使っているものばかり。もちろん、キッチンにある道具で代用することも可能だが、プロ仕様のグッズで正しく計量すれば味がぶれずにいつでもおいしい1杯をつくることができるし、気分も盛り上がる。
ジガーカップ
分量の異なる容器が両面に付いた金属製の計量カップ。さまざまなタイプがあるが、45ミリリットル(1ジガー)と30ミリリットルのカップが付いたものが使いやすい。アイストング
氷をグラスやカクテルシェーカーに入れるための専用トング。さまざまな素材や形状のものがある。
バースプーンカクテルの材料や氷をステアしたり、スプーンでレモンジュースやシロップなどを加えるときに便利。スプーンの反対側はフォークの形になっているものが多く、果実を搾ったり、瓶のオリーブを取り出すときに重宝する。耐熱性計量カップ
紅茶を淹れたり、ココアシロップ、ホットのモクテルをつくるときには耐熱性の計量カップが役に立つ。シズラー
炭酸飲料の栓抜きや保存に便利。内側のゴムパッキンが密閉してくれるので、抜栓後も炭酸の気抜けを防ぐことができる。
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モクテルに興味を持った方のために、野村さんが自宅でもつくりやすいモクテルのレシピを紹介してくださった。食前、食中、食後とシーンに合わせて3種類あり、どれも難しいテクニックを必要としないものばかり。これから、友人やお世話になっている方を自宅に招くことも多くなる時期。飲まない人、飲めない人を美味しいモクテルでおもてなししては如何だろうか。

材料
(1杯分)
- アールグレイティー…………80ml
- トニックウォーター…………80ml
- レモン果汁……………………小さじ1
- はちみつ………………………小さじ1/2
- カルダモン……………………適量
- レモンピール
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01
タンブラーグラスにカルダモンを入れて細かく潰す。専用のペストル(粉砕棒)があれば便利だが、家庭では麺棒やスリコギでも代用できる。
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02
アールグレイティーは濃いめに淹れて、ゆっくり冷やすと透明感のある色になる。耐熱のメジャーカップがあると便利。
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03
カルダモンが入ったタンブラーグラスに冷ましたアールグレイティー、はちみつとレモン果汁を加えてよく混ぜる。はちみちはしっかり溶かすこと。
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04
氷を入れ、トニックウォーターを静かに注いでステアする。
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05
レモンピールを軽く絞って香りをまとわせる。

材料
(1杯分)
- 白桃ジュース(ピーチネクター)…60ml
- エルダーフラワーシロップ…………10ml
- バニラエッセンス……………………数滴
- クローブ………………………………1粒
- 炭酸水…………………………………80ml
- レモン果汁……………………………小さじ1
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01
シェーカーやグラスにクローブを入れ、軽く潰して香りを出す。
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02
白桃ジュース、エルダーフラワーシロップ、レモン果汁、バニラエッセンスを入れて軽くステアする。
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03
茶漉しなどを使ってクローブを取り除きながらワイングラスに注ぐ。
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04
氷を入れて炭酸水を静かに注ぐ。
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05
軽くステアしてエルダーフラワーの香りが立つ瞬間を演出する。

材料
(1杯分)
- アッサムティー……………………50ml
- ココアシロップ……………………10ml
- バルサミコ酢………………………1〜2滴
- トニックウォーター………………50ml
- オレンジピール
- < ココアシロップの作り方 >
- バンホーテンココアパウダー……100g
- 上白糖………………………………50g
- お湯…………………………………200ml
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01
アッサムティーは濃いめに淹れ、ゆっくり冷ますのがポイント。
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02
耐熱カップにココアパウダーと上白糖、お湯を入れよく溶かしてココアシロップをつくる。
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03
クラスにココアシロップを注ぎ、バルサミコ酢を1〜2滴加える。
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04
氷と紅茶、トニックウォーターを加えステアする。
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05
オレンジピールを軽く絞って香りづけする。
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